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ナツミカン(夏ミカン)はナツダイダイ(夏橙)、ナツカン(夏柑)、ナツシロ(夏代)、ハギミカン(萩ミカン)など、いろいろな名前で呼ばれますが、正式名称はナツダイダイです。夏ミカンと呼ぶ方が一般的かと思いますので、以下、夏ミカンと呼ぶことにします。
夏ミカンは、江戸時代中期に山口県長門市仙崎町大日比の海岸に漂着した果実の種をまいて育てたのが始まりとされています。原木は昭和2年に史蹟名勝天然記念物に指定されました。夏ミカンは、結果当初には、酸味が強くて生食には不向きと考えられ、子供の玩具(ボール遊び)や冬の食酢の代用とされており、後に示すように夏ミカン本来の風味が出現する時期の5月に食すということはなかったようです。
果樹として価値を認められるようになったのは明治以後のことで、樹上の残果が初夏に試食され、風味がよかったことが認められ、その後萩市を中心に旧士族(貧乏士族)の救済策として庭先に植えさせ、副業とさせたことから栽培が広がり、それ以来各地へ産地化が進んでいったということのようです。このことは、庭先果樹から樹園地化がすすんだ特異な例とされています。しかし、昭和40年代の初め頃より品質面から暴落を招いて、夏ミカンの枝変わり(接ぎ穂が変異したものと推定されています)として大分県津久見市の川野さんの果樹園で昭和10年に発見され、昭和30年代頃より増植が始まっていたアマナツミカン(甘夏ミカン)に更新されていき、今の夏ミカンの栽培はほとんどが甘夏ミカンの栽培となっています。
甘夏ミカンも、カワノナツダイダイ(川野夏橙)、アマナツ(甘夏)、アマナツカン(甘夏柑)といろいろな名前で呼ばれますが、正式名称はカワノナツダイダイです。カワノナツダイダイからはその後、シンアマナツ(新甘夏)、ベニアマナツ(紅甘夏)、タチバナオレンジ(立花オレンジ)などの枝変わりが発見されています。カワノナツダイダイを甘夏ミカンと呼ぶ方が一般的と思いますので、以下、甘夏ミカンと呼ぶことにします。甘夏ミカンの特徴は、夏ミカンより酸の含量が少なく、早くから食べやすいことです。
それでは本題に入りましょう。夏ミカンは、かつては他の果実の端境期となる4月から6月にわたって生産されるただ一つの生果で、広く消費されてきた代表的な晩生カンキツでした。すなわち、この時期に他の果実が市場に出回らないことと、この時期は気温が上昇し、次第にむし暑くなっていく季節に、爽快な酸味のある食物が欲しくなる生理的欲求に合致した果物であったことが消費の要因でした。夏ミカンの風味が発揮されるようになる時期は4月中・下旬からなので、収穫期は4月中旬から6月末までで、その盛期は5月上・中旬です。収穫が遅いほど減酸して風味がよくなるので、できる限り収穫は遅い方がよいのですが、5月中旬以降から着色が急に淡くなり、6月になると一部黄橙色から緑色に変わってしまう「回青」という現象が発生して外観が悪くなるので、その前に収穫して、減酸して風味が向上するまで貯蔵されて出荷されていました。ただし、寒害で落果する機会があり、経営的には不安定な果樹です。
一方、甘夏ミカンの収穫期は本来4月上旬から5月上旬で、この時期の果実では糖度はやや低下するものの酸が大幅に少なくなり、甘酸適和して風味のよい果実となります。ただし、この時期まで樹上に果実をつけておける地域は、年平均気温が16.5℃以上の伊豆地方や和歌山県の南端、九州南部など極めて限られた地域です。そこで、甘夏ミカンは経営的に有利になるように、地域の気象に合わせて収穫するように指導されてきました。すなわち、低温地域で、冬季の寒害(苦味が出てス上がりを起こしたり、落果する)を受けるところでは、寒害回避のために12月下旬から1月上旬に収穫して、貯蔵後3月中〜4月上旬までに出荷し、寒害の恐れのない暖地では、品質を考慮して2月中下旬〜3月が収穫適期とされています。なお、甘夏ミカンの適地は年平均気温が16.5℃以上、冬の最低気温が−3℃以下にしばしば下がらない地域とされています。
これらのことから、なぜ、夏ミカンと呼ばれるかがお分かりいただけたかと思いますが、お住まいが都内ということと寒害の恐れはあるかもしれませんが、寒害の恐れのない暖地の収穫期との関連から、庭に植えられている果樹は甘夏ミカンであると考えます。その昔、私は夏ミカンの強い酸を和らげるために重曹を果肉に付けて食べていた記憶がありますが、そのような酸味は多分ないのではないでしょうか。そうすると、甘夏ミカンである可能性はさらに高いと思います。
以上、ご参考いただければ幸いです。(回答者:小原 均)
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